高専”卒”は就職に便利かもという話
はじめに
高専を卒業する人間が進むルートは主に 3 種類あり、1 つは就職、1 つは専攻科に進学、もう 1 つは大学への編入学です。
特に大学に編入するような学生の多くは、その大学(あるいは他)の大学院に進学する気でいると思います。
私は高専から大学に編入した一方で、院進することなく学部卒で就職することに決めた(おそらく)少数派です。
本記事は私の就職活動において、高専卒であることがアドバンテージとなったと思っている点と、就活に対する感想を記すものです。
あくまで私自身の実体験からなるものです。私の経歴がかなり特殊なことに加え、客観的に見てかなり都合よく就活が終了したので、参考にしづらいと思います。
しかし、特に面接においてかなり感触の良かった点、内定が出た後のフィードバックでも評価されていた点についても記すので、役立つこともあるかもしれません。
あなたは誰ですか
- 産業技術高等専門学校から電気通信大学の情報数理工学科に編入学
バリバリ院進するつもりで大学編入を決めた卒研がそこそこ辛くて嫌になっちゃった落伍者- AtCoder 青(アルゴ・ヒューリスティック共に)
- インターンは全て落ちたので行ったことなし
学部卒の就活はなかなか苦しい
学部卒が就職活動を行う場合、競合相手の多くは修士卒の方々です。
また、採用側もメインとなるターゲットは修士卒のようで、面接のために作成する自己紹介スライドの必要事項には”研究内容”という卒研配属もされていない学部 3 年生や 4 年生なりたてでは作成が厳しい項目があります。
逆説的にはこの項目さえ書ければ後の条件は同じなので、学部卒でも十分彼らと渡り合うことができるといえます(コードテストを実施するような企業は流石に学歴よりもスキルを重視してくれると信じています)。
弊学には半年ほど前倒しで研究できるシステムがあった気もしますが、留学するためのシステムだったと思うので編入生には縁がありません。
“情報科学の達人”や“未踏”関連の経験があるとこの項目について中身のある内容を書くことができるかもしれませんが、そういう事をやってる方々は当たり前ですが”高専からの編入生”よりもなお少数であり、そもそも彼らは院進なり起業なりをするので(偏見)関係ありません。
高専はその構造上この問題を解決することができます。
高専は 5 年間で学部相当の内容までを履修する(要出典)
高専は高校の文系科目や化学・物理で不要な(?)箇所の授業を減らし、空いた時間に専門科目を追加することで 5 年間で大学相当までの知識を身につける事ができます(これは高専の説明会で教員に言われたことですが、6 割くらい正しかったです)。
殆どの高専生が行うものは大学のそれと比較しると質の低いものになりがちではありますが、5 年生になると卒業研究を行います。
したがって、上述した自己紹介スライドを不足なく作成することができます。
僕が就活を行った上で高専卒が明確に役立ったと感じたのはこの 1 点です。
高専は就職に強いとよく言われますが、これは高専から就職する学生だけではなく編入した者も恩恵を享受するすることができることを知りました。院進したら意味のないものになりますが。
就活概要
ここからは実際に私が行った就職活動の流れを記します。
夏休みあたりに就職を考え、以下の戦略で就活に挑みました。
- 以下を満たすような企業を列挙
- 名が知られていそう
- 給料がよさそう
- 所謂“ブラック”ではない
- 開発職がある
- 競プロが認知されていそうだと尚良し
- 採用が始まったら即エントリー
- 内定が出たら終了。全てに落ちたら院進する(修士卒で再チャレンジ)
「嫌」でない業務ができればよく、開発は嫌ではないので、企業はかなり雑に選びました。
競プロ云々については自分のスキルベースが競プロなので、「より嫌じゃない度が増すなぁ」くらいの気持ちです。
実際に働いて嫌だったら数年後に転職すればいいだけの話なので。
これを行った結果、10 月から動くことになってびっくりしてました。いくらなんでも早すぎる
また、ピックアップした中でかなり上位にある企業を初手に受けることになり、内定をいただくことができたのでかなり安心でした。
ピックアップした企業の内、エントリーした(しようとした)企業を、エントリー開始日の順に A 社 ~ C 社としています。
この 3 社のみエントリーが 2022 年開始(しかも全て 10 月)で、かつ内定をいただいたのが年末だったので他の企業は省略しています。
A 社
サマーインターンに落ちた企業です。
あまり競プロが役に立つ感じではないですが、世界的に知られている企業の日本支部だったので候補にありました。
説明会でそもそも技術職が存在しないことに気づいたのでエントリーをしませんでした…。
アメリカの本社に行くと技術職がありますが、そこまで頑張るモチベを持てなかったので断念
B 社
ぶっちゃけ何をやってるかよく知らないしおそらく競プロは出て来ない感じですが、競プロっぽいことを専門にしていそうな子会社があります。
内部に競プロ勉強会があるらしいです。
エントリー開始日は 10 月ですが、コードテストの受験締め切りが年内だったのでエントリーだけしました。
C 社に落ちてからコードテストを受ける予定だったのですが、内定が出たので結局何もしていません。
内定が出た後は採用情報のメールが来ないようにしようとしたのですが、マイページに受信を取りやめる項目がなかったので停止できず、年度末までほぼ隔日のペースで新卒情報が送られてきてメールボックスが汚染されていました。
C 社
サマーインターンに落ちた企業その 2 です。
トラフィックが異常に多いサービスを提供している企業で、ピックアップした中でも本命でした。
チーム参加のコンテストを開催したりもしています。
システムの高速化とかできたら面白いなと思ってエントリーしました。
エントリーと同時に筆記試験とコードテストをやりました。
前者の方はネットワークについての問題で、高専の授業でやった古典的な内容しか知らなかったので、都度調べながら回答していました。
導入がやけに丁寧だった記憶があります。
最後の問題でとある問題を解決する方法を実装レベルで答えよとか聞かれたんですが、導入を活かして答えられる気がしなかったので、全て無視して golang はすべてを解決するとか書いたと思います。
後者は簡単な競プロ問題と複雑な実装問題の 2 問構成でした。
実装問題は正直かなりしんどくて、制限時間ぎりぎりまで書いてました。
11 月に試験に通過したことが通知され、一次面接を受けることになりました。
一次面接は社員数人と行う形式で、事前に用意した自己紹介スライドを用いて進んでいきました。
スライドは、3~4 枚程度かつ研究の内容を含むよう指示されていましたが、インターンの時と同一の内容でした。
したがって、インターンのときに作成したスライドを使用しました。
今考えればあまりに怠惰だったと思います。
一次面接も通過し、CEO と最終面接を受けることになりました。
偉い人がこういう場に出てくるんだなとか思いながら受けたんですが、コードテストで書いたものをちゃんと読まれてるっぽくてかなり驚きました。
一次面接と同じことを喋ってたと思います。
年末に内定が出て、給料もかなり良かったので全てを終了しました。
面接について
C 社の面接でアピールしたこと、内定が出た後のフィードバックで評価してもらったこと等を記します。
アピールしたこと
以下に面接で紹介した自分の持つスキルや表彰の一覧を書きます。
これらは全て高専在学中に得たものであり、大学では本当に何もしていません。
僕は決して強い人間ではないので実態を知っている人からすると大したことないものばかりかもしれませんが、この辺は並べることに意味があると思っています(4/7 が競プロ関連)。
- AtCoder レート
- JOI 本選出場
- PCK 総合 13 位 : これは本当のギャグで、本選に出場していません
- supercon 本選出場
- 某ハッカソン特別賞
- 卒研の内容でポスターセッションに出たら貰った賞
- アルバイトでの業務経験
アピールの中でチーム開発経験や業務経験について述べましたが、採用側のこれらに対する食いつきがめちゃくちゃ良かったです。
採用した学生は将来的に同僚になるわけで、確かにこれらができることは重要だと思います。
特に業務経験についてはコードレビューやドキュメンテーションの経験があるかについて聞かれたので、これらの経験があると有利かもしれません。
志望動機については「自身の持つスキルとマッチした業務をやりたい。C社にはそれがある」という内容を強く推しました。
それ以外に話す事が無かったともいいますが、結果としてこれはかなり良かったみたいです。
フィードバック
フィードバックでは、主に以下の 2 点を評価していただいたことが分かりました。
- コードテスト・面接を通して相手に伝えるための“丁寧さ”を感じた
- 「自身の持つスキルを活かせる仕事がしたい」という熱意を感じた
2 番目について特にコメントすることはありません。そのままなので。
1 番目で話に上がったのはコードテストと研究についてです。
コードテストでは正解数だけでなく書いたソースコードを読まれることは知っていたので、変数の命名や関数の切り分けをかなり丁寧にやったのが功を奏しました。
競プロ勢はここらへんを雑にやりがちなので、コードテストを受けるときは気をつけましょう。
研究については 1 枚で概要を伝えることは大変なのでかなり端折って説明する必要がありましたが、上述のポスターセッションで似たようなことをした経験が活きたのかもしれません。
面接で研究について聞いているのは前提知識がない人に対して伝える(伝えようとする)力を見ている印象を受けたので、やっぱり研究について書けない学部卒には厳しいものがありそうです。
まとめ
私は院進から逃げるために就活した結果、内定が出て無事に解放されました。
結論として、院進と就職のどちらにするかを悩んでいる学部生は、修士卒でも受けるであろう(本命のような)企業を受けてみることを強く勧めます。
なぜならば、不利な戦いにはなりますが内定を得た時のメリットは大きく、仮に全て落ちたとしても 2 年後に再チャレンジすることができるので、この行動にはデメリットが存在しないからです。
採用開始時期が早い企業はサマーインターンの直後に採用が始まったりするので、「IT職の就活はかなり早い場合がある」ことには留意してください。